クロアチアは過去に立ち向かうことができるのでしょうか?
Englishto
クロアチアは戦争の過去とどう向き合うべきか
2025年7月、クロアチアの首都ザグレブで、国内最大規模となる50万人を動員したコンサートが開催された。主役は、独立戦争時代の武勇と強硬なナショナリズムで知られる歌手マルコ・ペルコヴィッチ(通称トンプソン)。彼の音楽が愛国心と結びつく一方で、しばしばクロアチアの第二次世界大戦中のファシズム政権「ウスタシャ」への賛美と批判されてきた。今回、観客の一部が「Za dom spremni!(祖国のために、準備万端!)」というウスタシャのスローガンを叫び、ファシスト式敬礼を行ったことで国内外に衝撃が広がった。
クロアチアはバルカン半島に位置し、複雑な歴史と多様な民族背景を持つ。19世紀の民族主義運動や20世紀のユーゴスラビア連邦を経て、1991年に独立を果たしたが、独立戦争時にも激しい民族対立や戦争犯罪が伴った。そして、第二次世界大戦中にはウスタシャ政権がナチスの傀儡国家として大量虐殺を行い、その負の遺産が現代にまで尾を引いている。
戦後のユーゴスラビア時代、民族主義やファシスト象徴は厳しく抑え込まれていた。しかし、独立とともにナショナリズムが再燃し、ウスタシャの象徴やスローガンが一部で復活。公式には否定されつつも、右派勢力や一部の国民には今なお郷愁や称賛の対象となっている。特に独立戦争の記憶と重なり合うことで、その是非が複雑化している。
トンプソンのコンサートはまさにこの歴史の歪みを映し出す出来事となった。政府や一部の支持者は「愛国心でありファシズムではない」と強調し、問題を過小評価しようとする声も強い。だが、欧州連合や隣国セルビア、国内の少数民族団体からは厳しい批判が相次ぎ、政治家の対応の鈍さも指摘された。
このような現象はクロアチアだけの問題ではなく、ヨーロッパ全域で極右勢力が台頭する現代において、過去の忌まわしい歴史とどう向き合うべきかという問いを突きつけている。国の公式姿勢と社会の一部に根強く残る過去への郷愁、そのギャップが社会の分断を生み、民主主義の未来にも影を落とす。クロアチアが本当に過去と向き合い、未来に進むためには、歴史の暗部を直視し続ける覚悟が問われている。
0shared

クロアチアは過去に立ち向かうことができるのでしょうか?